約 1,076,895 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1846.html
使い魔は引き籠り-1 使い魔は引き籠り-2 使い魔は引き籠り-3 使い魔は引き籠り-4 使い魔は引き籠り-5 使い魔は引き籠り-6 使い魔は引き籠り-7 使い魔は引き籠り-8 使い魔は引き籠り-9 使い魔は引き籠り-10 使い魔は引き籠り-11 使い魔は引き籠り-12 使い魔は引き籠り-13 使い魔は引き籠り-14 使い魔は引き籠り-15
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1536.html
珍妙な帽子を被った男が机のケーキを見て何やら喚いていた。 「なんで残り4個なんだよクソッ!なんて縁起悪ィんだ!」 「それなら最初から3個にしておけばよかったじゃあないですか、ミスタ」 「そうなんだがよぉーー……まだ、クセが抜けきらねーで、つい5個買っちまうんだよ……」 ブチャラティ。アバッキオ。ナランチャ。フーゴ。 かつて5人だった仲間は、新入りの……現在、パッショーネのボスであるジョルノを除いて全て居なくなってしまったのだ。 「そうですね…ですが、彼らの意思は僕達が受け継いでいるんです。それに……フーゴだって時間が経てば戻ってきてくれますよ」 『サン・ジョルジョ・マジョーレ島』で組織を裏切った時、唯一その場に残ったフーゴだが、彼なりに協力をしてきてくれていた。 ディアボロを倒し組織を掌握した際フーゴが戻ってきてもいいように体制を整えていたが、フーゴ自身がそれを許さなかったようで戻るには至っていない。 やはりブチャラティ、アバッキオ、ナランチャが死んだ事に負い目を感じているのだろう。 「ミスタァーーーウエエエーーーンハラヘッタヨォ~~~~~」 「おいおい、だから言ったろうがよォ~~~4は縁起が悪りーんだ我慢しろって…!」 「モウガマンデキネーーヨミスタァーーーー!クレークレーーー」 ミスタがピストルズ達をなだめているが、収まりそうにない。 それを見たジョルノだが、薄く笑みを浮かべ言った。 「好きにして構いませんよミスタ。今日はもうやる事は特にありませんからね」 「お!?そうか、悪りーなジョルノ!」 「アギャギャギャギャ!メシ食イニイクゾーーーー!」 「何かスゲー美味いトマトを使った料理を食えるとこがあるらしいんだが、オメーも行くか?」 「そんな店ができたんですか?残念ですけど、トリッシュがこっちに来るらしいんで、一人で行ってきてください」 「出迎えってやつか。パッショーネのボスもトリッシュだけには敵わねーらしいな」 「そういう事です」 「日本でやってたクオーコ(コック)が里帰りしてきて、知り合いの店手伝ってる間だけらしいから、行くならオメーも早い方がいいぜ」 そう言うとアギャギャギャギャと騒ぐピストルズ達を連れミスタがドアを開け外に出て行った。 「さて、店はこっちだったな」 軽い足取りで歩くが、何かに正面からぶつかった。 「うぉぉぉ!いてて…なんだじーさんじゃあねーか。立てるか?」 「あ……ああ、スイマセンがああああ、手を貸してくれないかなあああああ」 倒れている老人と、立っているミスタ。 面倒だったが、状況的に見て放置すると色々と誤解を受けかねない。 「しょうがねぇな……ほらよ。俺は今から飯食いに行くんだから早くしてくれよ」 「それはそれは……」 老人がミスタの手を両手でガッシリと掴み立ち上がるが…次に言った言葉はミスタをブッ飛ばすに十分だった。 「だが、お前は、もう何も食えないさ……ミスタ」 あまりにも覚えのある状況と台詞。 唯一自分が、何も出来ずに敗北した相手を思い出すが、ヤツはブチャラティに列車から突き落とされ死んだはずだ。 だが、これは……! 「て、てめェーーーー!まさか!!」 片手で銃を抜き老人に向けるが、あの時と同じなら間に合わない。 そう思い、何とかジョルノに遺す術を張り巡らせたが、『それ』はやってこなかった。 「はて……?何か言いましたかなああああああ?」 「と、とぼけるんじゃねぇーーーーーッ!オメー今、確かに俺の名を言ったじゃあねーか!」 「ここ最近、曖昧になりもうして、よく覚えとらんのですよおおおおお」 銃を突きつけられている事にも関わらず変わらないペースで老人がそう答える。 周りも騒がしくなってきたようだ。老人に銃を突きつけている男。どう考えても分が悪い。 「チッ!」 手を振り解くと、その場から逃げるかのように走り去った。 「ジョルノォーーーーーーーーーーーー!!」 「ずいぶん早かったですね。トリッシュならもう来てますよ」 扉を蹴破らんばかりに入ってきたミスタに少し眉を潜めたが、まぁ何時もの事だと思い大して気にしていないジョルノだったが 次にミスタが言った台詞には、さすがに反応せざるをえなかった。 「暗殺チームの……確か……そうだ!プロシュートが生きてたんだよッ!!」 「……それは無いはずですよミスタ。見間違えじゃないんですか?」 「いや、マジだって!」 「考えてみてください。ブチャラティから聞いただけですが、150キロの列車から突き落とされたんですよ?万が一生きていたとしても再起不能なはずです」 なおも食い下がるミスタに少し辟易したのか、ジョルノが何があったのか聞き出す事にした。 「とりあえず、落ち着いてください。何があったんですか?」 さっきあった事をミスタが説明をするが、当のジョルノは何かこう…何時もと変わらない表情だったが、何かを諦めたような顔をしている。 「つまり手を掴まれて、あの時と似たような事を言われたからそうだって言うんですか?」 「オメーは直にあいつを相手にしてねーから分からねーだろうが…!ありゃマジで本人だぜ!?」 必死になってミスタがそう力説するが、ジョルノは醒めた目でミスタを見ている。 「……ミスタ。確かに僕はパッショーネに入団する時ブチャラティに『やるのは個人の勝手』と言いましたが……貴方が手を出すとは思っていませんでしたよ」 「……?何が言いてーんだ?ジョルノ」 何かこう、ガッカリしたような口調だ。 「腕を見せてください」 「お、おう」 腕を見せるが、ジョルノは腕の真ん中あたりを凝視している。 「……痕はありませんね。吸引系ですか?」 「ジョルノ…オ、オメーまさかとは思うが……!」 「マリファナかコカイン……どのルートを使って手に入れたんですか?僕が組織を乗っ取ってから麻薬チームは解散させたはずです」 「薬じゃねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 その日最大の叫びがその場に響いた。 「大声出して何やってるの?」 奥から出てきたのは、ディアボロの娘、トリッシュだ。 「ええ、ちょっとミスタが麻薬を…」 「違うっつってんだろーがッ!!」 「……違うんですか?」 「たりめーだ!」 「何があったのよ」 状況を知らないトリッシュにさっきあった事を説明したが、似たような反応だ。 「いいですか?さっき手を両手で掴まれたと言いましたよね?」 「ああ、そうだぜ」 「ブチャラティが言うには、もう一人のスタンドを利用してスティッキィ・フィンガースを叩き込み、彼の右腕を切断して突き落としたんです」 「ブチャラティは嘘を見抜いても嘘を付く理由は無いから、そのとおりなんでしょうね」 「時速150キロで地面に激突したんです。生きていたとしても 僕のゴールド・エクスペリエンスで部品を作ったのならともかく、そんな手が無事にくっつくはずがありませんよ」 「で、でもよォーーーー!確かに『だが、もう何も食えないさ…ミスタ』って言ったんだよそいつは! 銃を抜いちまって騒ぎになったから、それ以上追求できなかったけどよォーーーー」 「……それだけの情報なのに街中で銃を抜いたんですか?…しかも老人相手に」 「スタンド使いに襲われたんだから当然だろうがよ」 「……トリッシュ」 「……ええ、分かったわ、ジョルノ」 ジョルノに促されトリッシュが電話を取り、どこかに掛け始める。 「……どこに電話してんだ?トリッシュ」 「ミスタ、ちょっとそこに座っててください」 ミスタが椅子に座ると同時に、ロープを持ってきたジョルノがスタンドで手早くミスタを縛った。 「な、なにすんだてめェーーーーーー!」 「じっとしててください。時間がかかるかもしれないんで」 「ト、トリッシュ!オメーも何か言え……」 トリッシュの方を見るが、その話し声を聞いて愕然とする事になる。 「……ヴェネツィア総合病院ですか?……ええ、そうです。精神科のベッドの予約を一つ……名前は『グイード・ミスタ』でお願いします」 「な、なにやってムゴォ!」 そう叫ぶミスタをジョルノが手早く猿轡で黙らせる。 「心的外傷後ストレス障害……PTSDですね。さっさと入院して良くなってくださいよ」 「ウンガァァァァァアアア(違うつってんだろーが!)」 「何です?聞こえませんよ。そんなに不安なら氷でも持っててください」 「ウンゴォォオオオオ(オメーが話せないようにしたんだろーが!)」 グイード・ミスタ―ヴェネツィア総合病院 精神科に強制入院 スタンド名『セックス・ピストルズ』 簀巻きにされ、どこかに運ばれるミスタを建物対面のオープンカフェに座った壮年の男が薄く笑いながらそれを見ていた。 「ああはなるとは思ってなかったが…ま、恨むなら信用されてないテメーを恨めってこったな」 そして机の上の紅茶を口に運ぶが、一口飲んで顔を顰めた。 「…………不味い」 どうにも合わない。以前ならそうでもなかったろうが、『向こう』に居たせいで味覚が変わったらしい。 貴族用の茶の葉。ネアポリスのある意味淀んだ水とは違う天然水。 どう見ても、味に格段の違いがある。 金を払わずに店を出るが、その時『青年』になっていた男は誰にも気付かれる事無く外に出ることが出来た。 再び自身を多少老化させ懐からサングラスをかけ街を歩く。 髪も結構伸び、それを降ろしているため見知った顔に見られたとしてもバレる事は無いだろう。 「さて……どうすっかな」 ミスタにちょっかい出したとは言え、現在のボス―ジョルノを相手にする気はさらさら無かった。 「まさか、あの新入りがボスを倒してるとはな」 この5日間、組織の事を調べたが、ボス―ディアボロが倒されジョルノにパッショーネが乗っ取られている事を知る。 ディアボロが相手なら何があろうとも暗殺を慣行するが、ブチャラティの新入りがボスの座に収まっていると知りそんな気は雲散していた。 まして、暗殺チームは壊滅しているのだ。結末を知り心に納得する事はできたが、やる事が無くなっていた。 良く言えば自由。悪く言えば暇。 ちなみにゼロ戦は発見された後、日本に運ばれたらしい。 大戦中の戦闘機が稼動状態で見付かったのだ。ニュースにもなっている。 気付いた時は燃料ギリギリでルーンも消えていたため危うく墜落しそうになったのだが、操縦法は辛うじて覚えていた事で何とか建て直し着陸を慣行する際にメローネが「後輪からディ・モールト優しく着陸するんだ。前輪から着陸すると教官に怒られるからな!」と言っていた事を思い出し、何とか墜ちる事無く戻る事ができた。 航空機の着陸の基本だそうだがゲームの受け売りだ。タイトルは『パイロットになろう2』 「国外(そと)に出るか」 イタリアでは見知った顔が多すぎる上に、それなりに襲われる理由もある。 金はあった。ポルポの隠し財産ではないが、ソルベとジェラードが殺された日から緊急用としてチーム全員が出し合い貯めた金が一括され隠されていた。 「悪りーな、オレ一人で使っちまう事になりそうだが……先に逝ったオメーらには必要ないだろ?」 納得させるようにそう呟くと、さっそく行動すべく動き出していた。 草原に立つのは桃赤青の三色。後、太陽光を反射するのが一つ。 「まだ一週間しか経ってないけど…ホントにもういいの?ルイズ」 「もちろんよ、神聖で美しく、そして、強力な……あいつに負けないぐらいの使い魔を呼ばないといけないんだから」 二日程引き篭もっていた事を知っているため、それなりに心配し聞いたキュルケだが、そう答えるルイズを見て、結構成長したわねと素直に感心していた。 かくいう本人も帰ったと聞かされた時は小一時間ほど呆然としていたのだが、立ち直りは早かった。 学院に戻ってきたシエスタにも話したのだが、ゼロ戦が日食の中に消えていく様子を見て、もうスデに知っていたようだった。 何時もと変わらない笑顔だったが、どこか寂しそうに見えたのはルイズだけではあるまい。 表情を崩さなかったのはタバサぐらいか。 ちなみにコルベールはゼロ戦が消えた事にもんのスゴイショックを受け徹夜の影響もあり3日程寝込んでいた。 ストレングスが沈黙した後、戦意喪失したアルビオン地上軍であったが、『レキシントン号だッ!』やストレングスの砲撃でトリステイン軍も一杯一杯だった。 両軍疲弊の半ば引き分けのような形だったのだが、帰る手段を失ったアルビオン軍が降伏するという形で終結した。 戦勝パレードの後に戴冠式も行われアンリエッタの婚姻も消し飛んだらしい。 なにせ、トリステイン単独で精強なアルビオンを破ったのだ。何もしていないゲルマニアに対し強気に出る事ができるのは当然だ。 「では、ミス・ヴァリエール。サモン・サーヴァントを」 コルベールがそう促すとルイズが一歩踏み出し詠唱を始める。 あの時とほとんど同じだが、ただ違うのは指に嵌めた水のルビーと虚無の使い手であるという事。 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!わたしは心より求め、訴えるわ…我が導きに、答えなさい」 杖を振り下ろすと……爆発が起きた。 『イタリアで発見された、旧日本海軍所属『佐々木武雄少尉』が登場していたと思われる零式艦上戦闘機が、修復を終え展示され……』 街頭テレビのニュースがそう伝える街を、髪を整えスーツでキメたプロシュートが歩いていた。 言葉は分からないが、映像を見る限りあのゼロ戦だと判断したようだ。 二日経ち場所は、ある者は魔都と呼び敬遠し、またある者は聖地として崇める混沌の地。かの有名な秋葉原。 外国人ですら知れ渡っているため、外人は珍しくはないが…どう見ても場違いというか、ぶつかったりしたら狩られそうなので皆避けていた。 「メローネのヤロー……よくこんな場所に入り浸ってたな……」 つくづく感心する。訪れた理由は、ただ単にメローネが入り浸ってた場所に興味があったからだ。 訪れてから結構後悔したが先に立たず。 メイド喫茶なるものを発見した時なぞ、敵スタンドに襲われた時よりブッ飛んだ。 元ギャングと混沌の街『秋葉原』。カルチャーショックを通り越してデカルチャーである。 当面の定住先として日本を選んだのは幾つかあるが、入国関連の審査が甘い事と簡単に身分を偽造できるからだ。 その気になればイタリア語講師で食っていけるだろう。 「なんでメイドが居るだけで、あんな馬鹿高い金取られるんだ?理解できねー」 まぁ店先で立っていた、セミロング黒髪メイドを見た時、シエスタを思い出したのだが。 「ま……もうオレの関われる事じゃあねーな」 行ける場所なら、する事が無くなった以上、ペッシようなあいつらの面倒見てもいいとは思うが、もう関わりの無い事だ。 金はまだまだあるとは言え限りがある。とりあえず食っていかねばならない。現実的な問題は山積みだった。 「う~~~~パソコン、パソコン」 今、修理が終わったノートパソコンを求めて全力疾走している俺は高校に通うごく一般的な高校生 強いて違うところをあげるとすれば出会い系に興味があるってとこかナ――― 名前は『平賀才人』 そんなわけで秋葉原にあるPCショップにやってきたのだ 修理が終わったパソコンを受け取り、ウキウキ気分で家路に着く途中、思いっきり人にぶつかった。 「いってぇな……前見て歩けよ……」 余所見していたのは思いっきり彼である。だが、せっかく修理したパソコンが壊れては洒落にならないという考えからそんな言葉が出た。 ……出たのだが正面を見て後悔した。 外人だ。それもこんな場所にも関わらずブランド物っぽいスーツでキメている。 彼の貧弱ゥな想像力は場所に関わらずスーツ装備=マフィアor某機関の工作員という結論に達したのだった。 そして次に取った行動は―― 軽くデカルチャーを感じながらモーゼの如く街を歩いていたのだが、人にぶつかった。 前を見ていないわけではなかったが、デカルチャーを受けていたため気付けなかったようだ。 もっとも、相手も前を見ていないようだったが。 現役時代なら、蹴りが飛ぶとこだがここは日本。入国管理はザルだがイタリアと違い警察は優秀な方である。賄賂も効かない。 ベイビィ・フェイスとは違うが携帯用のパソコンを庇うようにして少年が倒れていたので手を顔の前に差し出すと…恐ろしい速度で土下座された。 「スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマセン!」 必死だった。なにせ謝まるために起きようとした瞬間、腕が伸びてきて目を指でえぐろうとしてきたのだからッ! 17年生きてきてヤクザな世界の方々とは一切関わった事が無いので、ちょっと勘違いしているご様子。 「目はホント勘弁してくださいッ!いや、できる事なら全部勘弁してくださいッ!」 相手が外人であるという事も忘れ日本語で言いながら、『組織の工作員』だの『殺し屋』だの『血も涙も無いマシーン』だの色々な想像をしながらなおも地面に頭を打ちつけるかのように土下座をする。ハッキリ言う。スゲー目立っている。 ギャラリーも出来始めているが誰も助けようとはしない。東京砂漠だ。この時ばかりは馴染んだこの街を恨んだ。 「なんだ?このマンモーニは……」 目の前には叫びながら思いっきり土下座する少年。 日本語でなにか言っているが、ポーズと照らし合わせると謝っているのだろうと思う。 当然の事だが、目をえぐる気なぞ無い。ただ単に手を差し出しただけだが、勘違いされたようだ。 「腑抜け野朗がッ!なんだ?そのザマは!?ええ!?」 ボギャア!ドカッ!ボゴッ!ボゴッ!ボゴッ! (ペッシならこうだな…) 少年を踏みつけていたようだが、どうやら想像だったようだ。 説教したい衝動に駆られていたが、その姿が同じ黒髪のもの凄い勢いで人に謝り倒すメイドと被った。 「日本人ってのは皆こうなのか?」 ちょっとばかし偏見だが、出会った二人がこうなのだから仕方あるまい。 ギャラリーも出来てきたので面倒ごとになる前にカタを付ける事にした。 「スイマセン!スイマセン!スイマセン!スイマはぐぉ!」 土下座していると、頭に衝撃。なんだ、凶器か、凶器で殴られたのか。 バールのようなモノ。という凶器名が思い浮かんだが、よくよく考えれば衝撃が軽すぎる。 恐る恐る顔を上げると、その外人が呆れたような顔で犬を追い払うかのような手をしながらこっちを見ている。 「い、行っていいって事ですかね……?」 当然日本語だから返事は無い。 恐る恐るその場を離れる。走らない。走りたいけど走ったら逃げたと思われ何か追われそうだったからだ。 ゆっくりと歩きながらその場を離ようとした時『マンモーニ』という単語だけよく聞こえたのだが イタリア語なんぞ知ったこっちゃあないし怖かったので気にせずその場を離れる事にした。 「このマンモーニが」 恐る恐る、背を向け歩き出した少年に向け、そう言い放つ。 歳は分からないが、10代後半といったとこだろう。 その時スデにギャング世界に片足突っ込んでいたオレ『達』に比べてなんっつー平和な世界だと思ったのだが本来これが正しい世界なのだろうとも思う。 スーツのポケットに手を入れると何かある感触。 取り出してみると少しばかり驚いた。 「ヤッベ……そのうちオレが渡すと言ってたが……返すの忘れてたな」 手にするは大きなルビーが付いた指輪。風のルビーだ。 こちらの世界では盗品というわけではないから裏で売ろうと思えば、かなりの高値で売り捌ける。これからの事を考えるとそうしてもいい。 だが、そうする気は無い。 「持ってきちまったもんは仕方ねーな」 手で弄びながら歩く。さっきの少年と同じ方向だ。 しばらく歩いていると、正面に光る鏡のような物体を見た。 「……マン・イン・ザ・ミラー、イルーゾォか!?」 暗殺チーム、鏡の中のスタンドと本体の名前が出る。 戻った時、新聞を漁ったりして仲間の墓は確認したのだがイルーゾォだけ確認できなかった。 もちろん状況的に見て、その可能性は低い。 実際、パープルヘイズでドロドロに解けて死体が残らなかっただけだが、一瞬でもそう思わせるには十分だ。 思ったらなら行動する。スデにそちらに向け走り出していた。 先ほどのウキウキ気分から一転。かなり凹んだ感じで歩いていると何か嫌な予感して後ろを振り向いた。 「ok。これはドッキリだ。ドッキリテレビだな?皆して俺をハメようとしてるんだ。だからさっき誰も助けてくれなかったんだ」 言うまでも無いが軽い現実逃避である。 だって後ろを振り向けば、さっきの才人の中では『工作員』『殺し屋』『殺戮マシーン』と認定された外人が後ろに┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨という文字が浮き上がらんばかりにこっちに走ってきたのだから。 「最近ネタが無くてまた始めやがったな!カメラはどこだ!?」 必死こいてあたりを見回すが当然そんなものは無い。 だが、前方の光る鏡のような物体に気が付いた。 「カメラはアレだな!」 そう思った瞬間走り出す。これがカメラじゃなかったら死ぬ。 「もうホント、今時ドッキリなんて流行らないからやめろって!」 そういう思いに支配されていた彼は迷うことなく、その物体に触った。 「あのマンモーニ……!鏡に半身を…やはりイルーゾォか!」 あの少年をイルーゾォが襲う理由は分からないが、元暗殺チームだからそういう仕事を続けているのだろうと思った。 別段、かれこれ言うつもりは無かったが、自分より先に死んだと思っていたイルーゾォが生きている。 鏡の中の世界は許可された物しか通る事はできないが、向こうからでもグレイトフル・デッドかこちらの姿を見れば分かるはずだ。 「グレイトフル・デッド!」 スタンドを発現させ少年の腕を掴もうとする。 そんなもので止まらないというのは当然承知の上だ。 これで少なくともグレイトフル・デッドの存在には気付く。 だが、腕を掴もうとした瞬間、どこからか虹のような光が出ているのを見た。 腕を掴み発生源を確認すると発生源は握っていた右手の中だ。 「なんだ……?こい……つ……がッ!」 向こうで喰らった『ライトニング・クラウド』程ではないが似たような衝撃を受け意識が遠くなる。 「なん……だ……!?マン・イン・ザ・ミラー……じゃあ…ねぇ……!」 迂闊だったと思うが、スデに遅い。 ただ、意識が途切れる瞬間、前にもどこかで似たような感覚を受けたと体が覚えていた。 「……なんでまた爆発なのよ」 「ま、そう簡単にいかないってことよ」 「臥薪嘗胆」 虚無に目覚めたのに、またハデ爆発を起こした事に凹むルイズと、虚無に目覚めたことを知らないキュルケとタバサが何時の事という感じで流すが煙が薄くなるとコルベールがちょっと『ハイ』になりつつそっちを見ていた。 見覚えのありすぎるシェルエット。この世界では届くことの無い技術の塊。 「また、これを再び見れるとは思ってもいませんでしたぞ!ミス・ヴァリエール!」 ゼロ戦がそこにあった。 「なんで……?プロシュートと元の世界に戻ったんじゃ……」 そこまで思ってハッとした。 元の世界に帰ったはずのモノが再び現れたなら、乗っていた本人も居るのではないかと。 ゼロ戦の周りを捜すと影に脚が見える。 期待と、また呼びつけた事に殴られるんじゃないかという二つの思いが交錯する中、その脚の先を覗き込むと黒と白の見た事の無い服を着た、自分と同じぐらいの歳の少年が倒れていた。 「……また平民かしらね」 キュルケがルイズを覗き込む。声の調子がちょっと下がっているあたり期待していたのは同じらしい。 以前のルイズなら、ただの平民と判断しロクな扱いをしなかっただろうが、今は違う。 奇妙な事だが…… 悪事を働き、法律をやぶる『ギャング』、その中でも特に忌諱されるべき存在の『暗殺者』がルイズの心を成長させたのだ。 もう、『ゼロ』などというイジけた目つきはしていない… ルイズの心には、まだ少しだけだがさわやかな風が吹いていた…… 自分のやった事には後悔せず前向きに受け入れていこうという気持ちが多少なりとも目覚めていた…… だから、この少年が目を覚ました時も見下したような目はしていない。もちろん使い魔にする気ではあったが。 「あなた、名前は?」 「ってぇ……俺?……俺は平賀才人」 その瞬間、黄金のような風がその場に流れた。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/846.html
どっと疲れた。もう何が何やら。 わたしがため息をつくとキーシュもため息をついた。 わたしが顔を上げるとキーシュも顔を上げた。 わたしが右手を上げるとキーシュも右手を上げた。 こ、の、お、と、こ、は、あああああああああ……。 ……いや違う。冷静だ冷静だ冷静にならなきゃダメ。こうやって怒らせるのがこいつのやり口。 深呼吸を数度、真似するキーシュを無視して続けると、頭の血も降りてきた。 落ち着こう。毛布の上に寝転がると、キーシュも隣に寝転がった。 あんたねぇ、見る人が見たら絶対に誤解されるわよ。でも指摘したら負けだ。スルー、スルー。 「ねえキーシュ」 「キーシュだなんて。せっかくヒミツを分かち合ったんですから本名で呼んでください」 グググ……耐えろ。苛立たせるのが狙いなんだ。 「そうね、やたら長い上に語呂が悪いからミキタカでいい?」 「とてもいいですね」 名前馬鹿にされてんだから怒りなさいよっ、間抜けっ。 「ねえミキタカ。わたしが失敗した理由はわたし自身が一番よく知ってる」 マリコルヌにさえ馬鹿にされるゼロのルイズだからね。情けない話だけど、事実だからどうしようもない。 「だけどなぜあんたがサモン・サーヴァントを誤魔化そうとしたの。ペットの二十日鼠でどうこうしようって、いくらあんたでもそりゃ無理よ」 「ルイズさん、私はサモン・サーヴァントができないんです」 は? 「私はできる魔法とできない魔法がしっかりと別れているんです。私にサモン・サーヴァントは使えないんです。これは超数学で求めた真理です。間違いありません」 超数学云々はともかくとして、前半部分は理解できた。 そうだ、キーシュ――もうミキタカでいいよ馬鹿――ミキタカは、初歩の初歩が使えなかったり、応用中の応用が使えたりと、とてもちぐはぐなメイジだった。こいつならサモン・サーヴァントが使えないということも……あるかな? 「ですが、あなたは違います。爆発を起こしたことがそれを証明しています。絶対成功不可能な私と違って、ほんの少しの後押しさえあれば問題なく使い魔を呼び出すでしょう」 え……そ、そう? そうかな? やだなぁもう褒めたって何も出ないからね。 「私がその後押しをします」 「後押しってどうするのよ。二人で召喚するわけにもいかないでしょう」 「いいえ、断固として二人で召喚します」 「あのね、妄想もほどほどにしておかないといつか脳みそ爆発するわよ。コルベール先生が許すわけないでしょう」 「まずはルーンの詠唱に合わせて煙幕を焚き、先生の視界を塞ぎます。もちろん魔法は使いません。ルイズさんも私も特殊なメイジとして覚えられているでしょうから、特有の現象ということで納得してもらいましょう」 人の話聞かないのはもう慣れたもんね。だから悔しくなんかないもんね。 「そしてその後、ルイズさんは私を使ってサモン・サーヴァントを唱えます」 ぼうっとしていたせいじゃない。 モットーに従い、疲れきっていながらも頭の中ははっきりとしていた。 はっきりとしていてなお、目の前で何が起きたのか理解することができなかった。 隣で寝転がっていたミキタカの身体が解けた。 「召喚ができないとはいえ、私にも魔力はある。二人の力を合わせれば魔力も、成功率も二倍です」 私はどんな間抜け面でその光景を見ていたんだろう。 徐々にではなく、一斉にばらけていく。ミキタカの身体が、長い金髪が、鼻ピアスが、服が、全てが解け、一つの物体を形作っていく。 わたしは半開きで口を開けてそれを見る。口の中が乾き始めたことにも気づかない。 「二倍の魔力で二倍の使い魔を召喚し、煙の中で私とルイズさんが一体ずつ契約する。二人で呪文を行使する形になりますから、どちらも使い魔と契約できるわけです」 杖だ、これは。メイジの杖だ。 口も消え、耳も目も鼻も消え、ミキタカの痕跡が一切無くなっているのに声は聞こえる。 魔法じゃない。絶対に魔法じゃない。ベッドの上に寝た時点で、すでに杖は手放していたはず。それに一語の詠唱も無かった。それなのに、それなのに発動するなんて、そんな。ありえない。 「これが私のたてた作戦です」 「これ、幻覚?」 やっとの思いで声を出した。発言も発声もどちらも間抜けに聞こえたのは気のせいじゃないと思う。 「幻覚ではありません。現実です」 くっ、こいつに現実とか言われると無性に腹が立つな。 待てよ……そうだ、そういえば。 突然の怪現象に見舞われて混乱していたわたしの頭脳に一筋の光明が差し込んだ。 そうだそうだ、ミキタカの出自だ。母親がエルフという噂があった。 つまりこれは先住の魔法? だから杖が必要なかった? 詠唱も? そうか、ミキタカは先住の魔法を使えるんだ。だから使える魔法に偏りがあった。 特定の魔法のみ天才的に使いこなしたのもそういうことか。 うわ、すっごい腑に落ちた。納得。正体が分かると急に親しみを感じてくる不思議。 いいなぁ先住の魔法かぁ。ちょっとだけ格好いいよね。すっごい強いんだっけ。わたしも使ってみたいな。 「だけど……見れば見るほど本当に杖ね」 「もちろん杖ですよ。ただし振り回したり殴りつけたりはやめてくださいね。感覚はそのまま残っていますから」 何という事はない気持ちで杖に触れた。軽く握り、構えてみる。途端、 「おっおっおっおおおおおお!」 すごいすごいすごいっ。これはすごいよ。わたしの中にとめどなく魔力が流れ込んでくる。 この部屋の風景が、小物の一つ一つから毛布、ベッド、箪笥の裏の埃にいたるまで、全てが輝いて見える。 熱い。身体が熱い。熱風が吹き、吹き返し、わたしの中で轟々と吹き荒れている。 今ならできるような気がする。使うことができなかった、使えないせいで散々馬鹿にされてきた、どうしようもなく手の届かない存在だった、魔法を使えるような気がする。 「私の部屋で魔法はやめてくださいね」 分かってるわよ。何よ、人の心でも読んでるのかしら。 「読んでませんよ」 だったらいいけど。 「お願いします、ルイズさん。私と一緒に使い魔召喚の儀式をやりましょう。助けてほしいんです」 「……助けてほしい?」 「はい。助けてほしいんです」 その言葉には真実味があった。そう、ミキタカにしたってここで退学するわけにもいかないんだよね。 それに。ふうむ。これ、案外いけるかもしれない。それだけの説得力がある。先住の魔法ってやつは。 「どうしてもっ、助けてほしいっ……ていうなら手伝ってあげてもいいけど」 「そうですか。ありがとうございます」 同情ではなく、わたしからの手助けという形なら、ごく自然に協力することができるって寸法ね。 ミキタカめ、ルイズ使いがなかなか上手くなってきたじゃないの。どうせ偶然だろうけど。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/673.html
煙の晴れた中庭を前にしてルイズは天に向かって祈りをささげた (我等が始祖にして偉大なるブリミル、私何か悪いことを致しましたでしょうか? 今まで生きてきた中で嘘をついたことはあります、隠し事をしたこともあります ですが魔法が使えぬゼロという嘲笑に耐え、懸命に努力してきたつもりです たしかに神聖で美しく強い使い魔というのは高望みし過ぎたかもしれません、自分でもそう思います でもこれはあんまりじゃないでしょうか) 何度かの失敗の後でやっと呼び出すことに成功した自分の使い魔に視線を移す 髪の色は自分と同じピンク‐でも斑模様、服装はほぼ半裸‐三十過ぎがする格好ではない 平民という時点で問題外、外見でも不合格を宣告するには十分、駄目押しなのはその態度だ 私を、可憐でひ弱な百合の花の様な貴族の美少女を見て、怯えているとはどういうことだ 平民が突然こんな所に来れば混乱するのは無理も無いが、これはありえない 結論:これは使えない 「ミスタ・コルベール、もう一度召喚の儀式をやらせて下さい」 「ミス・ヴァリエール、それはダメだ」 あっさりと却下される 人事だと思って…、薄いの髪の毛だけではないらしい 神聖な儀式だの、伝統だの、ルールは絶対だの、再召喚が行えるのは使い魔が死んだ時だけだの、 どうでもいいことをまくし立てた挙句の果てに、時間が押しているからさっさと契約を済ませろと来た まあ確かに何時までもこうしている訳にはいかない、極めて不本意ではあるが契約を行うことにする 決してU字禿の言葉に押された訳ではない 口の中で呪文を唱えた後、怯える男に口付けをした 唇が離れた後、左手を抱えて男はのた打ち回りながら倒れた 私の唇に触れたのだから感激して涙するのが筋だろうに失礼な奴だ 刻まれたルーンを興味深そうに見ていたU字禿や私を馬鹿にしていた同輩が室内に戻ってなお、男は倒れたままだった その様を見て一人残ったルイズは声を上げる 「ほら、いつまでも寝てないでさっさと起きなさいよ」 反応がない いぶかしみながら、爪先でつついてみる ピクリとも動かない 「えっ!」 口に手をかざしてみる 息がない 「あれっ!?」 首に手を当ててみる 脈がない 「これって、つまり」 ■今回のディアボロの死因 ×ルイズにキスされたショックで死亡 ○ルーンを刻まれたショックで死亡
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/684.html
ルイズ達が目指しているのは、港町ラ・ロシェール。 トリステインから馬を走らせれば二日、空に浮かぶ大陸『アルビオン』への玄関口として知られている。 港町とは言っても海に面しているわけではない、いや、空を海に例えれば間違いではないが。 そのラ・ロシェールの酒場で、アルビオンへ行こうとする傭兵達が集まり、前祝いをしていた。 「アルビオンの王さまはもう終わりだね!」 「ガハハ!『共和制』ってヤツの始まりなのか!」 「では、『共和制』に乾杯!」 そう言って乾杯しあう傭兵達、彼らは元はアルビオンの王党派についていた傭兵達だが、王党派よりも良い待遇で貴族派が雇ってくれると知って、王党派を裏切った。 彼らは王党派を離脱すると、貴族派に付いて各地の傭兵達を集めた、この酒場に残っている傭兵達は、言わば連絡役なのだ。 ひとしきり乾杯が済んだとき、酒場に仮面を付けた男が現れた。 男は傭兵達に近づき、料理の並ぶテーブルの上に重そうな袋を置く、すると重みで口が開き、金貨が顔を見せた。 「働いて貰うぞ」 傭兵達はその男を不審に思ったが、袋に書かれているマークがアルビオン貴族派のものだったので、にやりと笑って頷いた。 一方、魔法学院を出発したルイズ達は、ワルドの乗るグリフォンの早さに驚いていた。 ロングビルとギーシュの乗る馬は、途中で二回も交換した、しかしワルドのグリフォンは疲れを見せずに走り続ける。 長時間馬を駆るのは乗り手にとっても大きな負担だが、ワルドとグリフォンはまったく疲れた様子を見せない。 「ちょっと、ペースが速くない?」 ワルドの前に跨ったルイズが言った。 ルイズはワルドと雑談を交わすうちに、学院で見せるようなくだけた口調に変わっていった、ワルドがそれを望んだためでもある。 「ギーシュもミス・ロングビルも、へばってるわ」 ワルドが後ろを向くと、ギーシュはまるで倒れるような格好でへばっている、ロングビルは明らかに表情に疲れが出ている 「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんだが……」 「普通は馬で二日かかる距離なのよ、無理があるわ」 「へばったら、置いていけばいい」 「そういうわけにはいかないわ」 「ほう、どうしてだい?」 ルイズは、困ったように言った。 「だって、仲間じゃない。それに……」 何かを思い出そうとして、結局そこで口をつぐんだ。 ルイズの頭に、古い宮殿での記憶が引き出される。 ある目的を持って二手に分かれたが、それが二人を見た最後だった。 三人いるはずの別チームが、再会したときは一人に減っていた。 炎の使い手と、砂の使い手、その二人を助けられなかったことをずっと悔やんでいる。 その記憶に引きずられたルイズもまた、仲間と離れるのは怖いのだ。 「やけにあの二人の肩を持つね。もしかして、彼はきみの恋人かい?」 「あ、あれが…? 冗談じゃないわよ」 ルイズは苦虫をかみつぶしたような顔をした。 「ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」 「お、親が決めたことじゃない」 「おや?ルイズ!僕の小さなルイズ!きみは僕のことが嫌いになったのかい?」 過去の記憶と同じおどけた口調で、ワルドが言った。 「何よ、もう、私、小さくないもの。失礼ね」 ルイズは頬が熱くなるのを誤魔化すように、頬を膨らませた。 グリフォンの上でワルドに抱きかかえられながら、ルイズは先日見た夢を思い出していた。 生まれ故郷の、ラ・ヴァリエールの屋敷で、困っているときは、いつもワルドが迎えにきてくれた。 だが、そこに現れる白金の光、光は徐々に人型をして、屈強な戦士を思わせる姿に変わる。 薄いブルーの色をしたその戦士に抱きかかえられ、ワルドと対峙するルイズ。 その夢が何を意味するのか、今のルイズには分からなかった。 途中、何度か馬を替えたので、ルイズ達はその日の夜中にラ・ロシェール付近にまでたどり着くことができた。 町の灯りが見えたので、ギーシュとロングビルは安堵のため息をついた。 「待って!」 不意にルイズがワルドを制止した。 「どうしたんだい?」 「誰かいるわ…2……3人…」 そのとき、不意にルイズ達めがけて、崖の上から松明が投げこまれ一行を照らした。 「な、なんだ!」 「馬から下りなさい!」 慌てて怒鳴ったギーシュに、ロングビルは指示を飛ばす。 突然の事に驚いた馬が前足を上げたので、ギーシュは馬から落ちてしまう、そこに何本かの矢が飛んできた。 もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。 「奇襲だ!」 「伏せなさい!」 ギーシュがわめくと同時に、ロングビルは地面を練金して泥の壁を作った、スカッと軽い音を立てて矢が突き刺さる。 ワルドは風の魔法を唱えて身の回りにつむじ風を起こし、矢を防いてでいたが、攻撃に転じようとしたときに別方向から一陣の風が吹いた。 同時に、ばっさばっさと羽音が聞こえた、その音に聞き覚えのあったルイズが崖の上に目をこらすと、六人ほどの男達が風の魔法に巻かれて崖から転がり落ちてきた。 「ほう」 感心したようにワルドが呟くと、がけの上から落ちた男達は地面に体を打ち付けてうめき声を上げた。 そして空には見慣れた幻獣…タバサの乗るシルフィードが姿を見せていた。 「シルフィード!」 ルイズが驚いて声を上げると、シルフィードは地面に降り、その上からキュルケが地面に飛び降り髪をかきあげた。 「お待たせ」 ルイズもグリフォンから飛び降りキュルケに怒鳴る。 「お待たせじゃないわよ! 何しにきたのよあんたたち!」 「あーら、助けにきてあげたんじゃないの。朝がた、あんたとギーシュが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こして後をつけたのよ」 キュルケはシルフィードの上に乗ったままのタバサを指差した。 寝込みを叩き起こされたとは言え、パジャマ姿は何か面妖だ。 「キュルケ、あのねえ、これはお忍びなのよ?」 「お忍び? …まさかギーシュと駆け落ち?」 ルイズは笑顔になりながら杖を抜いた、その仕草にキュルケが冷や汗を流す、やばい、怒ってる。 こんな場所で爆発を起こされてはたまったものではない、これにはキュルケも謝った。 「ま、まあ冗談よ!勘違いしないで。あなたを助けにきたわけじゃないの」 キュルケはグリフォンに跨ったままのワルドににじり寄り、しなを作った。 「おひげが素敵なお方ね、あなた情熱はご存知?」 ワルドは、側に寄ろうとするキュルケを手で押しやる。 「あらん?」 「助けは嬉しいが、婚約者に誤解を受けると困るのでね、これ以上近づかないでくれたまえ」 そう言ってルイズを見つめる。 「こ、婚約者?…ふーん、ルイズにねぇ…」 キュルケはルイズを冷やかしてやろうかと考えたが、気が乗らない。 ルイズに微妙な戸惑いがある、と感じたからだ。 しばらくしてから、男達を練金の手かせで拘束し、尋問していたロングビルとギーシュが戻ってきた。 「子爵、あいつらは物取りだと言っていましたが」 「ふむ……、なら捨て置こう」 ギーシュの報告を受けて 先を急ごうとグリフォンに跨るワルドをルイズが制止する。 「ルイズ、どうしたんだ?」 「あいつら、グリフォンに乗ったワルドを見ていたはずだわ。それなのにたった三人で襲ってくるなんて…ねえ、キュルケ、上空から見ても三人だった?」 「あたしが見た限りじゃ三人よ、ね、タバサ」 タバサは無言で頷く。 「何か気になることでも?」 ロングビルの質問に、メイジ4人をたった3人で襲う野党がいるだろうか?と、ルイズが答える。 「貴族派に嗅ぎつかれているのかもしれんな…どちらにせよ、ラ・ロシェールに一泊するしか無い、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」 ワルドは一行にそう告げた。 ルイズは腑に落ちないものを感じながらワルドに手を引かれ、グリフォンに跨った。 キュルケはシルフィードの上に乗り、本を読んでいたタバサの頬を突っつく、出発の合図らしい。 目の前の峡谷には、ラ・ロシェールの街の灯が怪しく輝いていた。 そしてルイズの中にいる『誰か』が、ワルドに対する警戒心を強めていた。 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-17]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-19]]}
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2514.html
スタンド使い同士が引かれ合うように、ガンダールヴのルーンはディオをその進むべき道へと推し進める。 だが、それは本当に正しいことなのだろうか?その結果は誰も知らない…。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ!第九話 カーテンの光がやわらかい明かりを部屋に満たす中、ディオは目が覚めた。日の具合からすると ルイズを起こすべき時間から30分は遅れてしまったらしい。ルイズを見るとこれまた陶器でできた人形のような顔で寝ている。 起きている時もこれぐらい静かならいい駒として使えるのだが、と思いながらディオはルイズを起こす。 だがルイズは特に慌てる様子もなく服を着替える(勿論ディオに渡して貰っている)。 別にルイズが遅刻しようがどうでもいいが一応聞いてみる。 「今日は…いつもより遅いようだけどいいのかい?」 「忘れてたわね。今日は虚無の曜日だから授業はないのよ。それよりも」 とルイズは珍しく手早く着替えると人差し指をディオに突き出す。 「さあ、今日は城下町に行くわよ!」 「城下町?」 また気まぐれが始まったのかと呆れるディオに気付かずルイズは説明を続ける。 「そう!あの時はたまたまだったけど、いつもあんな殴り合いが通用するはずないでしょ。 魔法が使えない以上剣の一つ二つ持たないと駄目よ。それに見栄えにも関わるしね。 あとついでにベッドも買わなきゃね。あんな臭いベッドをずっと使うつもりなら話は別だけど」 ディオにはどちらかというと剣よりも城下町の方に興味を引かれた。今まではトリステイン魔法学院という陸の孤島に 閉じ込められたようなものだった。だがこの世界の風俗を知る為には城下町は格好の場所であるし、うさ晴らしにもなる。 後者については言うまでもない。ディオは腕を組みながら答えた。 「いいだろう…ついていかせてもらうよ、ご主人さま」 ディオとルイズが部屋を出て角を曲がった直後、ルイズの向かいの扉からキュルケが出てきた。 ディオを口説き落とす為の化粧もばっちりだ。 「そうね、ルイズは物ぐさだろうからダーリンを開けに行かせるはず。そしてドアを開けたダーリンの胸に私が飛び込めば さしものダーリンも…勝った!ゼロの使い魔、完ッ!!」 キュルケは自信満々にドアを叩く。 沈黙。 もう一度叩く。 沈黙。 「ノックしてもしもぉ~し!ルイズ、まだ寝てるの!?」 と声をかけながら叩いても何も返ってこない。 嫌な予感がしたキュルケがアンロックを使って部屋を開け、馬で出て行く二人を見つけてタバサの部屋へ猛ダッシュしたのは その直後であった。 タバサは虚無の曜日が好きである。一日中自分の部屋に篭って好きな本を読めるからだった。 だが最近のお気に入りは小説ではなく『ツェペリの奇妙な冒険』と題した冒険漫画である。 場面はちょうど主人公のシーザーという青年が囚われの友人の知り合いの老富豪を助ける為、友ジョセフと共に 悪逆非道の軍隊の基地に女装して潜入しようとしたところである。 どう見てもバレバレな変装でどう見張りをごまかすのかワクワクしながらページをめくろうとするタバサであったが、 横から伸びてきた手がそれを掴む。 何を考えてるのかと見上げると、友人のキュルケが何か叫んでいた。仕方がなくアンロックを解除して抗議しようとする タバサであったが、キュルケの怒涛の勢いに飲まれる。 「あたしね!恋したの!でね、その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!そう、馬で! でね、あたしは行く先を突き止めたいけどあなたの使い魔じゃないと追いかけられないの!力を貸して!」 はっきり言えば断りたい。しかしたった一人の友人のたっての頼みである。断るわけにもゆくまい。 窓を開くと口笛を吹いて風韻竜シルフィードを呼ぶ。 「馬二頭。食べちゃだめ。」 せっかくの休日が台無しである。無意識のうちに爪を噛む。タバサは静かに暮らしたい。 それから暫くして、ディオとルイズは城下町に到着した。だがルイズの顔は心持ち暗い。 魔法が使えない代わりに馬の扱いには自信があったルイズだが、ディオはそれを上回る競馬の騎手顔負けな腕前であったからだ。 駅舎に馬を繋ぐとディオは周りを見渡す。人口は確かに多いが、町並みや道路の舗装はどう見ても産業革命以前である。 なるほど魔法が存在する以外は中世と同じと考えて差し支えないか、と一人ごこちてると、ルイズが声をかけてきた。 「どう?たくさん人がいるでしょ?驚いた?」 「ああ…驚いたよ(文明の低さに)」 その答えに満足したのかルイズは颯爽と町を歩きだす。 ルイズの後ろをついてゆくディオは昔貧民街に住んでいた事もあり大体の想像はつくが、この世界の文字が読めないので 一々ルイズに説明してもらう。 「あれは?」 「カジノダービーBr.」 「ほう、それでは向かいのあれは?」 「ブックスポルナレフ」 「ではこっちの」 「鳥犬専門ペットショップ・イギー!んなところよりさっさと行くわよ!」 そうしてルイズは恐れる様子もなく路地裏に入っていく。 狭い道を貴族くずれのスリが多発するというような話を聞きながら歩いてゆくと、明らかに武器屋と思しき店が目の前に現れた。 「ほら、着いたわよ」 とルイズが店に入ると太った親父が出迎えた。 「旦那、貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これぽっちもありませんや」 「客よ。」 「こりゃおったまげた、貴族が剣を!これはどういった心境で?」 と親父が目を丸くすると何かの冗談のように手を振る。 「だから違うわ。話を最後まで聞きなさい。今日はこいつに剣を買ってやりにきたのよ」 「ほほう、成る程。最近は下僕に装飾をさせるのが流行りなのですからな」 「貴族の間で?」 「そうでさ。なんでも『土くれ』のフーケとかいうメイジの盗賊が貴族のお宝を散々盗みまくってるって噂で。」 と店主は世間話をしながら宝石が各所に埋め込まれている一振りの剣を持ってきた。 「これなんかいかがでしょう?ゲルマニアの錬金術師シュペー卿が鍛えた剣、お値段に見合う威力は保証しますよ?」 ルイズも気に入ったようで満足そうな笑みを浮かべる。 「んー、なかなかいいわね…いくら?」 「そうですね、こいつは店1番の業物ですからね、新金貨で3000エキューで如何でしょうか?」 「た、高いわよ!もっと安くならないの!?」 いくらルイズでもたかが剣一つに広大な庭付きの豪邸が建てられるような金を払うのは躊躇われた。 その時、帽子を被った長髪の男が店に入って来たが、ディオを見るなりくるっとドアの方を向き、また外に出ていった。 店主から剣を見せてもらい、大剣を手に取りしげしげと眺めるディオ。と 「かーっ、わかってねぇなあんちゃんよ。糞みてえな安物売り付けようってこいつもこいつだが、 そんなもんに引っ掛かるような奴はそれにすら及ばねぇ。帰れ帰れ!」 店の奥から渋い中年男性の声が聞こえた。 「な、なによ今の!」 「デ、デルフリンガー、くそっ…いや、あいつは嘘つきのボロインテリジェンスソードでさぁ。気にしないで」 「へっ!嘘つきのおめーに嘘呼ばわりされるならおれっちが正しいってことじゃねーか!」 「なんだと!」 喧嘩を始める剣と主人。ルイズはあっけに取られて今のやり取りを見ている。さして気にする様子もなく辺りを見回すディオだが、 やがてその声を見つけるとなおも喋ろうとするのを無視して手に取る。 すると、デルフリンガーは今まで叫んでいたのが嘘のようにぴたりと声をあげるのを止めると、暫く考えてから口を開いた。 「…おでれーた。見損なってた。てめ、『使い手』か」 「『使い手』?『使い手』とはなんだい?」 「言葉通り、おめーはかなり黒いがおれの使い手って事よ。どうだ、おれを買わねーか?」 そこでディオはルイズに向き直り、剣を渡す。 「ルイズ、これにしよう」 「はぁ?こんな喋るだけのボロ剣どこがいいのよ!」 「君には珍しくなくてもぼくには珍しくてね、それにぼくの事を何か知ってるみたいだ。気に入った。親父、これはいくらだい?」 「いや、若奥様の言う通りそんなボロ剣よりこっちのシュペー卿の剣の方が…」 「その偽物が、かい?」 「…畜生!」 店主は机を叩くと、大剣をしまう。 「わかったよ。そいつだな?捨て値で100エキューでかまわねえよ!」 店主が負け、あまり出費せずに済んだ事を喜ぶべきか錆だらけの剣を選んだ使い魔を叱るべきか微妙な表情を浮かべるルイズと デルフリンガーを背負ったディオは家具屋に向かうべく店を後にした。 それを上空から眺める人影が二人。キュルケとタバサだ。ルイズ達がいなくなると早速店に入る。 「アッサラーム!今のメイジ、いえ、今の使い魔が欲しがってた剣とかってないかしら?」 店主はニヤリと笑うと手を振りながらさっきの剣を出す。 「ああ、こいつですね。さっきメイジの若奥様が買おうとしたんですがね、高いとかいって買い渋って結局ボロ剣買っていきましたよ」 公爵家の娘ともあろうものが貧乏ね、とほくそ笑みながらキュルケは値段を尋ねる。 「おいくら?」 店主は少し悩むそぶりを見せたあと、おもむろに値段を言う。 「本当は5000はしますが、事情がおありのようですな。いいでしょう、4500で勉強させていただきます」 いくらなんでも高い。だがキュルケは胸元を開くと色気たっぷりの声で誘惑する。 「ねぇ、もっと安く買えないかしら?」 「そ、それじゃあ4000…」 「ね…もっと色をつけて♪」 と、そこに先程店を出て行った男が入って来た。 「よぅ、ダンナ!…ヒヒ、実は最近いい仕事で金稼いだからよー、これを機会に傭兵始めようと思うんだが、なんかいーい剣はないかい?」 「ああ、こいつがあるよ。見てみるかい?」 と、急に商売人の顔に戻ると店主は大剣を見せる。帽子の男はそれを受け取ると多少大袈裟にも見えるそぶりで剣を振るう。 一方のキュルケは気が気ではない。 「おっ!なかなかいい剣じゃねぇか。いくらだ?」 「ちょっと!今私が交渉してるのよ!」 と、キュルケが慌てるが、店主は 「悪いね、これはまだあんたのじゃないんだ」 と言うと男に向き直る。 「そうだな、5000ってとこだ。」 「そこをもーちょっと安くならないか?」 「しかたねえな、4200でどうだ?」 「お!それなら払えるぜぇ!」 と、男は大金の入った袋を取り出す。 何故平民があんな大金を!とキュルケは驚くが、ここであの剣を売り払われる訳にはいかない。 今まさに剣を渡そうとする店主の腕を掴むと、キュルケは慌てて叫んだ。 「ちょっと待って!4500でいいわ!」 「本当かい?」 胡散臭そうな目つきで男とキュルケを見比べていた店主だが、にっこりと微笑むとキュルケに剣を渡した。 「…仕方ないな。お客さん、運が悪かったと思ってあきらめな」 「マジかよ…なんてこったい」 そうしてがっくりとしている男を残してキュルケはほくほく顔で剣を持つと、タバサの元へと向かう。 「…どう?」 「用事は済んだわ!さ、学院に戻りましょ。今夜はビッグサプライズよ!」 「…シルフィード。」 「キュイ♪」 とシルフィードは浮き上がるとルイズ達に気付かれぬように学院に戻るのであった。 数時間後、酒場の席で先程の二人が乾杯をあげていた。 「いやー、今回はいいカモが釣れたな。これもお前さんのお陰だよ」 「なぁーに、中々のいい女だったが、別に殴るわけじゃねえ、問題はないッ!」 男はいつの間にか短銃を取り出し、ニヤニヤする。 「それにしてもあの嬢ちゃんも驚くだろうよ、おれは確かに傭兵だが得物はこいつだって事をよ。」 「だな。」 「ま、おれがいたからこそだが、ダンナがいるからこそおれも楽して金儲けができるって事よ。 ダンナも知ってるだろ?おれの人生哲学をよ」 「ああ。1番よりNO.2!だろ?」 「その通り、わかってんじゃねーか…ヒヒ」 つまりはこういう事である。カモを見つけると店主は手を挙げて合図をするとともに吹っ掛けて、渋る客の目の前で 男が買うふりをする。そしてぐずぐずすると先に買われてしまうと慌てた客は店主の言い値で買ってしまうという訳だ。 「だがどうしたんだい?最初の客が来た時いきなり逃げ出しやがってよ」 長髪の男は手に持った短銃を回しながら答える。 「いや、どーもあのメイジの使い魔?あいつを見た時にな、いやーな感じがしてよ。3回くらい前世であんな奴に 雇われていたような、例えるなら暗殺しようとしても一瞬で後ろに廻られそう?そんな感じがしてな」 「なんじゃそりゃ」 呆れる店主に男は酒をつぐ。 「ま、気にしててもしかたがねぇ、ほら、もう一度乾杯だダンナ!」 「おう、乾杯!」 ディオは計らずも名剣を手に入れた。キュルケは予想外の出費で役立たずの剣をつかんだ。そして店主は計算通り金を儲けた。 世の中には知らない方がいい事も、悪い事もある。 to be continued…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/726.html
朝靄の煙るヴェストリ広場、そこにヴァニラは一人佇む 正確には彼のスタンド「クリーム」も一緒なのだが常人の目には映らないうえにスタンドは本体と一心同体、故に彼は一人だった 元の世界、延いてはDIOの元へ帰るための頼みの綱だった――蜘蛛の糸よりも頼りないが、ルイズの渾名である「ゼロ」の意味を知り 、いつかルイズに見切りをつけることを視野にいれなければと考え、毎朝ルイズを起こす前に精神鍛錬をやるようにしていた。 少しでも早く、少しでも遠くへスタンドを飛ばせるように、それこそ自分と対峙した時のシルバーチャリオッツのように (だが当面の目標は・・・) 顔を動かさぬまま、そっと森の方へ視線を向ける (あの爬虫類をここから消し飛ばすことだな) 茂みから小さな炎と、つぶらな瞳がヴァニラを見つめていた 亜空の使い魔――ヴァニラの日常 鍛錬を終え、部屋に戻ると洗濯物をまとめて洗い場へ持っていく 心底嫌そうに下着を洗っているのを見られてからシエスタが代わりにやってくれているので洗濯籠に入れただけでまた部屋に戻ると、今度は未だに夢の中のルイズを起こす 「おい、朝だ。起きろ」 部屋の端から端までフッ飛ぶくらいに思いっきり蹴りを入れてやりたいところを自制し、少々力を込めて肩を揺さぶる 「う・・・・?」 しかしルイズは首を傾げるような仕草で寝返りを打つと毛布をすっぽりと被り、丸まってしまった。 今ここにマニッシュボウイがいればいいのに、などと物騒なことを考えながらヴァニラは溜息を吐くと無理やり毛布を剥ぎ取った 「な、なによ!なにごと!」 「朝だ、遅れるぞ」 ようやく起きたルイズに着替えを投げてよこすといい加減聞き飽きた愚痴をBGMに着替えが終わるのを待つ。正直、だるい 男であるDIOと比べるのもなんだがあまりに・・・・・貧相なルイズの着替えを見たところでヴァニラにとって何の慰めにもならない 彼の名誉のためにいっておくが別にアーッ!とかではない、念の為 着替えを終えたルイズに伴い食堂へ赴くと相変わらず貧相な食事をいそいそと平らげ、部屋に戻る振りをして厨房へと潜り込み賄を別けてもらう 念の為廊下の途中でクリームを使って姿を消しているので万が一ルイズに見つかる心配も無いだろう(途中で危うくコルベールの頭髪を消し飛ばしそうになったがばれなかったので気にしない) .... まともな朝食を終えると外に出て薪割を始める マルトーは別にいいといっているのだがヴァニラは妙な律儀さで毎朝食事の礼にと薪割りをしていた 一応手斧を借りはしたがそれは使わずクリームの手刀で次々と薪を割り、あっと言う間に一日分の煮炊きに必要な薪の山を築き上げるいくらスタンドが弱体化したとはいえ木材を裂く程度の力は残っていた 「・・・・またか」 気配を感じ、薪を縛り纏めながら視線を向けると建物の影から巨大な赤い蜥蜴が顔を覗かせている 最近気がつけば事あるごとにあの蜥蜴に見張られていた 誰の使い魔かは知らないが普通使い魔とは主の目や耳になるものらしいから恐らく何らかの目的で偵察をしているのだとヴァニラは推測していた (杖を消し飛ばした連中か、それともあのヌケサクの使い魔か・・・何れにせよまっとうな目的ではないだろうな) 気づいていない風を装い、マルトーに薪割が終わった事を告げるとルイズが食べ終わるよりも先に部屋に戻る 椅子に座ってDIOの無事を祈っていると何やら機嫌の悪そうなルイズが貴族にあるまじき悪態をつきながら戻ってきた 「どうした、何か面白い事でもあったか?」 「うるさいわね!あんたには関係ないでしょ!?」 ヴァニラが皮肉を込めて声を掛けるとルイズは悪鬼の形相で睨みつけ、喚くその答えにヴァニラはつまらなそうに肩を竦ませるが、授業の準備をしながらぶつぶつと繰り返される独り言からキュルケとかいう奴と何か一悶着あったらしいと察するが頻繁に聞く名前だけに毎度の事なのだろう (私に被害が及ぶようなら釘を刺しておきたいが・・・) しかし態々その相手を探し出して始末をつけるのは何となくルイズのために働くような気がして止めにした その判断があんな事態を招くなどと、その時は誰も気付きませんでした・・・ To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1238.html
『ゼロと奇妙な隠者と――?』 冬もそろそろ過ぎ去り、歩みの遅い春が訪れようかとする頃。ジョセフが召喚された春から一年弱、ルイズ達も三年生に進級することを決めて一足早い春休みに入ろうとしていた。 使い魔として平民が召喚されただけでも大概大事だと言うのに、それから起こった数々の出来事は辛いことも悲しいことも楽しいことも嬉しいことも手当たり次第。 それでも、この一年をもう一度過ごせと言われれば、喜んで過ごしたいと思うようなお祭り騒ぎだった。少なくともルイズと彼女の親友達はそう思っている。 そんなお祭り騒ぎの毎日でも、そんなに毎日イベントが詰め込まれているわけでもない。何かしらのイベントが起こる日よりも、平穏な日々の方が多いに決まっている。 だが今日から、ルイズとジョセフ主従、そして彼女達を取り巻く人々から平穏な毎日と言うものが消し飛んでしまうことを、まだ誰も知らない。 その日の晩。キュルケは寮の階段を登り、フレイムと共に自室へ帰るところだった。 彼女の隣の部屋はもはやこの学院で誰も知らない者はいないルイズの部屋である。ジョセフが召喚されてからも毎日毎日騒がしかったが、彼がシュヴァリエの称号を受けて貴族になり、シエスタがジョセフ付きのメイドになった最近は騒がしさに拍車がかかっている。 それも大体はルイズとシエスタがきゃんきゃん言い争いをしているため、そのけたたましいことと言ったら。しかもジョセフが積極的にスケベなものだから二人にちょっかいを出したりしてとんでもないことになったりするのがどうにも。 今夜も今夜とて階段を登り切っていない内から騒ぎ声が聞こえてくる。 「本当に飽きないわねえ。もうちょっと他人の迷惑とか考えてくれないかしら」 自分も部屋に毎晩お客様を招待しているのは棚に上げて、呆れた様子で呟いた。 だが少女二人の騒ぎ声が、何やら普段と違うようだった。 何とはなしに赤ん坊の泣き声のような声も聞こえてくる。 「え? 何? そういうプレイ?」 キュルケの頭の中ではルイズとシエスタに囲まれたジョセフが赤ん坊のカッコをしてあんなことやこんなことをしているピンク色の妄想が素晴らしい勢いで広がってしまった。 すげえ。これは後学の為にも見物……いやいや見学させてもらうべきかもしれないわ。 そう考えたキュルケはすぐさま足取りを抜き足差し足にし、ルイズの部屋の前へ素早く辿り着いた。 だが近付いていくごとに、部屋の中で行われている光景が奇妙に変貌していく。 ルイズとシエスタの声に赤ん坊の泣き声……と焦っているらしいジョセフの声。 なんだ? 四番目の誰かさんがいるのか? もはや好奇心は沸点直前。 キュルケは期待に打ち震えながら、ドアノブを掴んで一気に蹴り開けたッ! 「ハーイ皆さん! 何してるのかしらーーーーッ……て」 そこで繰り広げられていた光景は、キュルケの思考を凍結させた。 部屋の住人であるルイズとジョセフとシエスタ……はまあいい。いておかしいことはない。だが問題は。大問題は。三人が床で車座になって全裸になっているという―― (あ。やっべ。これは) キュルケはすぐさま現状を把握すると、何気なく手を上げて廊下へ出て行く。 「ごめん。お楽しみの真っ最中だったとは。お邪魔虫はクールに去るわ」 「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!」 現実に素早く立ち戻ったルイズが勢い良く立ち上がり、気を利かせて去ろうとするキュルケを無理矢理引き戻そうとする。 「ちょ! あんたルイズ! 服くらい着なさいよっ……て」 小さな身体の何処にそんな力があるのか、というくらいにキュルケの腕をつかむルイズは、きっちりと制服を着込んでいた。 「事情は中で説明するから! 早く入りなさいよ!!」 そのまま部屋に引きずり込まれたキュルケは、何とはなしに(ああ、男一人に女三人というのは初めてだわ。女の子相手でも大丈夫かしら)と考えていた。 それから数分後。 キュルケはルイズとジョセフとシエスタからの説明(主にジョセフ)を受けて、一応は事態を納得した。 今、彼女の腕の中では赤ん坊らしき何かが泣きじゃくり、彼女の服もまた消え失せていた。ジョセフから手渡されるまでは半信半疑だったが、こうやって実際にだっこしてみると信じざるをえなかった。 「これがスタンド能力? でもダーリンのハーミットパープルとは違うわよ」 「そりゃそうじゃ。スタンドッつーのはそれぞれ個人差があるモンじゃからの」 そう言うジョセフの両目は後ろから覆い被さるルイズの両手で隠されていた。 事の発端はこうだ。ジョセフが昼間に洗濯をしていると、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。何かと思って近付くと乳母車があり、その中に透明な赤ん坊がいたのでひとまず拾ってきて現在に至っているらしい。 「そもそも乳母車の材質がこっちじゃー作れやせんモンじゃからの。この子もなんかの拍子でこっちに来ちまったと考えて問題はないじゃろ」 ちなみに乳母車にはばっちり「Made in Japan」の刻印がついていた。 「それにかんしゃく起こすと服以外にももっと色んなものが透明になっちゃうのよ。私達でどうにかしないとどうにも出来ないわよ。それに……」 (ジョジョのお願いを無碍には出来ないもの) ぽそぽそ、と何かを言ったのは三人には判ったが、何を言ったのかは聞こえなかった。だが大体何を言ったのかは、判られてしまった。 「はいはい判った判った。でもどうするのよ、普通の子供ならまだしも子守りなんて雇うワケにもいかないでしょ? 下手に知れたらアカデミーに連れてかれたりしかねないわ」 悪名高いアカデミーのことは、ゲルマニア出身のキュルケでも大体知っている。 これまでに華々しい戦歴を挙げてきたルイズとジョセフがいまいち認められていないのも、アカデミーに二人のことを知らしめてはいけないという、オスマンとアンリエッタの配慮によるものでもある。 「その点は大丈夫です、ミス・ツェルプストー。私は故郷で弟や妹達の世話をしてきましたし、子守は慣れてますから」 シエスタがしゅたっと手を上げる。ここでジョセフの点数を稼ぐ目論見も当然ある。 「でもシエスタ、あなたも昼間色々仕事してるでしょ。この上仕事増やしたらキツくない?」 彼女の目論見を看破したルイズがすぐさまジト目でツッコミを入れる。 「いざとなりゃあわしが寝ないで子守してもええがの」 24時間働けるEnglish Man In NewYork(←イギリス人には見えないし空気読んでない)が現れた。 「とりあえず他にも色々と問題があると思うんじゃよ。赤ん坊は泣くのが仕事じゃし、しかも気に入らんことがあれば周りのものが全部透明になっちまう。一応学院長には話を通してきたからいいんじゃが、あまり周りに知らせるアレでもないからのー」 「んじゃタバサとギーシュとモンモランシー辺りにも話を付けといていいんじゃない? あそこらへんは言うなって言ったら言わない面子だし」 こういう時に現実的な思考が出来るキュルケは頼れる味方である。 「まず、色々用意しなくちゃいけないモノがあるんじゃないの? 子供育てるって一言で言ったって、買うものだってあるでしょ。次の虚無の曜日に、城下町へ行くなりしないと」 キュルケの言葉に「あ」という顔をした三人を見て、彼女は自慢の赤毛を緩く振った。 「……明日にでも、城下町で色々揃えてきなさい。先生には上手に言っといてあげるから」 これはこれから苦労するぞ、という直感を疑おうともせずに溜息をついてから、キュルケははたと思い当たったことを口にしてみた。 「そう言えば、フーケ騒動からどのくらい経ったっけ」 いきなり何を言い出すんだと思いながらも、ルイズが答える。 「ええと……ジョセフが召喚されてからちょっとくらいしてだから……十ヶ月前?」 「正確には十ヶ月と一週間ちょっとだわね」 にまぁ、と満面の笑みを浮かべた口元を手先で覆い隠したキュルケへ、ルイズはいつものように眉毛をV字にして声を尖らせた。 「何よキュルケ。言いたいことがあるならちゃんと言えばいいじゃない」 「あ、言っていいんだ?」 今にも笑い出しそうな唇を懸命に動かしながら、キュルケは自分の想像を口にした。 「あのお熱いベーゼでルイズが孕んだ結果だって考えたら辻褄合わない? 御懐妊から御出産までそのくらいだって考えたらちょうどそのくらいだものねー」 いつものように大暴れし始める二人を押し留めたのは、赤ん坊の泣き声と、なんでもかんでも透明になっていく光景だった。 それから老人と少女達の悪戦苦闘七転八起の子育てが始まることになる。 ただでさえ気性が激しいのに透明な女の子(シエスタの触診で判明した)ということで、並々ならぬ苦労があることは火を見るより明らかだったが、それを育てる親代わりがジョセフも含めて世間知らずな貴族達というのもまたシエスタの苦労の種の一つだった。 子育て経験豊富なシエスタはともかくとして、ルイズ、キュルケ、タバサにジョセフと、子育てに積極的に関わることになった他のメンバーは非常に役に立たないので、「将来必要になるかもしれない」ということも含めてシエスタの子育て授業が始まることになった。 「まさか平民の私が貴族の皆様方にこんな事をお教えする日が来るだなんて」とあわあわしていたシエスタだが、必要に迫られた生徒達の飲み込みは非常に早いことに安堵もした。 赤ん坊が透明な件についても、キュルケから提供を受けた化粧品で化粧をさせることで一応の決着はついた(でもこんな若い頃から化粧するとお肌にどうかしらねえ、と言ったキュルケに「お前が言うな」というツッコミも入った)。 そして誰が親代わりになるかという点については、赤ん坊がジョセフにばかりよく懐いていたので、満場一致で「ジョセフの子供」ということになり、めでたく「静・ジョースター」という名前をつけられることとなった。 長期休暇中ということもあり、シエスタやジョセフがメインで静の世話をする中、他の三人が代わる代わる手伝いをするというパターンが成立していた。 しばらくは慣れない子育てに七転八倒していたのも、すぐに七転八起になり、やがて全員が赤ん坊を抱く手付きにも慣れた様子が見えるようになってきた。 「魔法の勉強より大変」とタバサが呟いたのだから、平坦な道のりではなかったのだが。 しかし一つの問題が解決したと思えてきた頃、密かにもう一つの問題が成長していた。 すっかり春めいて花も咲き誇る頃、静はすっかりジョセフを独占してしまっていた。 静が透明なのをさておけば、どこからどう見ても孫の世話をする祖父そのもの。 だがそれは、ついこの間まで祖父の横にいた孫、ルイズには気に入らない事態だった。 (何よ何よ! 私の使い魔なのにどうして赤ん坊の世話にかかりっきりなのよ!) 子供も喋れない赤ん坊に嫉妬するのもどうかと思われるが、実際に弟や妹に親を取られたと思った子供は、親の目を引こうと「子供返り」と呼ばれる退行現象を起こすことがある。 大家族の生まれであるシエスタは赤ん坊とはあんなものだ、と割り切ることが出来たが、末っ子なルイズはそんなことだと割り切ることも出来なかった。有体に言えば、ヤキモチが悪化したということだ。 その結果、丸一日ジョセフ達の前にルイズが姿を現さなかったのに至り、キュルケとタバサはある重大な決意を固めた。 二つの月が大きく空を輝かせるその日の夜。主のいないルイズの部屋の中、揺りかごの中ですやすやと寝息を立てている静を、椅子に座ったまま優しげに見守るジョセフの後ろにキュルケがやってきた。 「あ、ダーリン? シズカはあたしが見てるから、ちょっとルイズのトコに行ってあげて」 「あん? いや、じゃがキュルケももう寝る時間じゃろ? なんならシエスタに……」 「あー、シエスタなら今日は仕事が多かったからって部屋で寝てるし」 モンモランシー特製の睡眠薬で、一番のお邪魔虫は朝までぐっすりである。 「それに孫はシズカだけじゃないでしょ。ルイズもたまには構ってあげないと」 「ふむ……そうじゃの。んじゃ、ちょっとの間子守を頼めるかの」 ジョセフはルイズを大人だと認めているので(少しの間ならほっといても大丈夫)と思っているフシがある。だがジョセフは自分も17歳だった頃をすっかり忘れてしまっているが、17歳なんていうものはまだまだ子供もいいところである。マンモーニである。 そしてキュルケに言わせれば「ルイズもダーリンもコドモ」……と。まあそんな所である。 と言うわけでジョセフはルイズを探しに部屋を出て行って。キュルケは苦笑しながら、音を立てないようにそぉっとジョセフが座っていた椅子に座った。 ルイズはヴェストリの広場の片隅で一人、膝を抱えて座り込んでいた。 もう何時間こうしてるか判らないが、部屋に帰るとイヤなコトを言ってしまいそうで帰ることは出来なかった。今もまだ、イヤなコトを言ってしまいそうなので帰れない。 それでも、きっと。 (……ジョジョが迎えに来てくれたら、帰れるかもしれない) 最初のうちは(迎えに来たら怒鳴り倒してやる)だったのが、(何よ自分の主人くらい迎えに来なさいよ! そんなに赤ん坊の方が大事なの!?)に変わり、やがて(……どうしよう、こんな時間になっちゃった。帰るタイミング逃した)を経て現在に至っている。 こうやってじっと一人でいると、「なによルイズ・フランソワーズ。赤ん坊に嫉妬してどうするっていうのよ」と、冷静な考えがやっと復活する。 色々ヤキモチだって妬いた。それこそジョセフに近付いた女性みんなにヤキモチを妬いてきた。でも、だからって。赤ん坊にまでヤキモチ妬くというのは、果たして貴族以前にオンナノコとしてどうなんだろう。 (……だってジョジョは……盛りの付いた犬で……私の使い魔なのに……目を放すとすぐに他の女の子にちょっかい出すし……で、でも、わ、わたしの……私の、おじいちゃんで……その……) おじいちゃん、と認めるだけでも顔が真っ赤になるのに、それ以上言おうとすれば顔から火が出るような騒ぎになる。 しばらく奮闘していたが、結局それ以上考えることも出来ず大きく首を振った。 (何よ私) 小さな小さな溜息を、ついて。 (……バカじゃないかしら) くすん、と小さく鼻を鳴らした。 さく、さく、と草を踏みしめながら近付いてくる足音にも、顔を上げなかった。 「おお、ここにおったか」 「……何しにきたのよ」 尻尾があれば思わずぴんと立っていただろうに、口から出るのはいつもの憎まれ口。 「老いぼれの犬めが寂しがりのご主人様を探しに来たんですじゃよ」 「うるさいっ」 不貞腐れてそのままでいれば、左によっこらしょと座った気配が感じられた。それから大きな右手で、優しく頭を撫でられる。 ルイズは抗うこともせず、ただ撫でられるままになっていた。 「あーと。ほら、機嫌直せ。いつからここに座っとったんじゃ、すっかり髪の毛が冷えちまっとるぞ。こんなじゃ風邪引いちまうじゃろ」 「……いいのよ。どうせ私はバカなんだから風邪なんか引かないわよ」 「迷信じゃよそんなモン」 そう言ったジョセフは、ルイズの腰を両手で掴んで軽々と持ち上げてしまうと、そのまま自分の膝の上に彼女を乗せてしまった。 「っ、何するのよ勝手に!」 抗議と共に背後のジョセフに振り向き睨み付けはするものの、相変わらずの気楽な笑みが見えただけだった。 「ほれ、冷えた身体を暖めてやらんとな。女の子は身体を冷やしちゃいかんからの」 腰に当てられた手からほのかに日差しのような光が漏れ、ルイズの身体に波紋のような暖かさが回っていく。 決して不快ではない心地よい温度に、ルイズは不服そうにしながらも静かに目を閉じた。 「またわしがなんかやったんかの。最近は……特に何もやっとらんつもりじゃったんじゃが」 「……別に何もないわ」 一瞬言葉を選んだ後で出てくる否定の言葉が、決して彼女の意思を忠実に表しているわけではないことは、もうそろそろ一年を経過する付き合いを経たジョセフにはよく判る。 「えーと。あれか。静のコトかの」 当てずっぽで言った言葉に、小さな肩がぴくりと震えた。 「……うるさいわね。いいわよ、主人なんかほっといて赤ちゃんの世話でもずっとしてなさいよ。ガンダールヴなんかやってるより子守やってる方がよっぽどお似合いだわっ」 その言葉に、ジョセフはおおよその事情を察した。隠せない苦笑を隠す努力もせず、腰に当てていた手を肩に回して、自分に振り向かせた。 「……何よっ。何か言いたいことでもあるの」 月明かりに照らされる少女の両目は、月光を受けて色濃く潤んでいた。泣き虫なこの少女は、自分に泣き顔を見せるのをあまり良しとしないのだ。 「んじゃまあ僭越ながら。静も大切じゃが、ご主人様もとても大切に思ってるんじゃよ」 「……あたしとシズカのどっちが大切なのよ」 「そりゃ両方じゃよ」 「嘘でもこういう時はご主人様って言いなさいよっ。気が利かないわねっ」 赤ん坊に張り合う17歳というのも、どういうモンじゃろうなあ。と思ってしまうのは、仕方のないことだった。 呆れも半分、微笑ましさも半分。 なおも何かを言い募ろうとするルイズの言葉を飲み込むように、唇を重ねた。 「んっ……」 きゅ、と瞼を固く閉じるが、ジョセフの唇を拒もうとはしない。 誰もいない広場の片隅に、ほんの少しの間だけ沈黙が訪れた。 そして、唇が離れた時。ルイズの小さな手はジョセフの耳を摘んでひねっていた。 「アイチチチチチ、お気に召しませんでしたかの」 その言葉に、更にぎゅうううう、と力を込めてひねり。そして、耳元に濡れた唇を寄せて囁いて。 ジョセフだけに聞こえた言葉に笑みを漏らすと、今度は両頬と額に、キスが落ち。それから もう一度、唇が重なった。 結局二人が部屋に帰った頃には、キュルケは椅子の上ではなくベッドの上ですやすやと寝入っていた。 ルイズに叩き起こされたキュルケは、寝癖の付いた赤毛を気だるそうにかき上げながら言った。 「シズカに弟か妹を拵えるのは、せめて学院卒業してからになさいよ」 To Be Contined?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2035.html
入り口にあった松明に火をつけ、タバサたちは鍾乳洞の中を進む。 先導していたミノタウロスが部屋のように開けた場所で立ち止まる。 そこには机、椅子、炭などの生活用品だけではなく、 秘薬のつめられた瓶や袋、マンドラゴラの苗床や奇妙な道具などが整理されておかれていた。 棚には奇妙な人形や仮面、鉱石、そしていくつか本が並んでいる。 「粗末な物しかないが、座りたまえ」 腰掛けたタバサが男に問いかける。 「あなた、何者?」 「ラルカスという。元は、いや今もだが貴族だ、十年前にミノタウロスを倒した」 「その格好は?」 「ああ、気になるだろうな…端的に言えば、禁忌である脳移植を行なったのさ、 人間の体、そして不治の病と引き換えにこの恐ろしいほどの生命力を持つミノタウロスの体を手に入れた」 「それで、魔法が使えるし、言葉も通じるのね!」 シルフィードがワムウの後ろから口をはさむ。 「その通りだ、しかし魔法が使える、といっても人間のときとは比べ物にならないね。 人間のときもかなりの腕の水と火のメイジだと自負していたが、今やスクウェア以上の腕はあるのではないか、と思う。 もっとも、比べる相手がいない以上本当のところはわからぬがな」 ラルカスは口の端を歪める。 「寂しくはないのね?」 シルフィードが質問する。 「もともと独り身だ、絶縁こそされなかったが事実上ただの放蕩貴族、洞窟だろうと大して変わらぬ」 「でも、おいしいもの食べられなさそうなのね、お肉はちゃんと食べてるのね?」 ラルカスの口が数秒止まるが、慌てた様に話しを始める。 「……出たところの森で生き物ならいくらでもとれる、火も見ての通りあるしな」 「その森の生き物に人間の子供を食う奴がいるのか?」 唐突にワムウが話を変えたので、ラルカスは首をかしげながら答える。 「オーク鬼だっているし探せば剣牙虎くらいはいるかもしれんが、それがどうした?」 「質問を変えるか、ここの入り口に埋まっていた人間の骨は、誰の食べ残しだ?」 場が静まる。 「そ、それは本当なのね!?」 タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。 険しい顔になったラルカスが声をだす。 「……あれはこのあたりに住むサルの骨だ」 「そうか、化け物なら化け物らしく残さず食えばよかったものを」 ワムウがワンステップで飛び掛かり、ミノタウロスを思いっきり蹴りあげる。 「待つんだ、話を聞いてくれ」 「俺は戦いに飢えている、戦う理由ができたというのに話し合う戦士がどこにいる。 嘘ならもう少しまともな嘘をつくんだな、もっともそれでも俺が聞く保証はないがな」 杖を抜いたラルカスが放つ水の弾をいなし、もう一度胴体を蹴りあげると、堅い皮膚は破れ、肉体が露出する。 露出した胴体をワムウは一部食い、既にラルカスは致命傷のようだった。 「なんだ、この程度か。わざわざ遠出したというのに手応えがないな」 ぶつぶつと回復魔法を唱えるが、ほとんど傷はふさがらない。 小さな声でもごもごと話す。 「…二男として生まれ、不治の病に侵され、放蕩し、俺を超える化け物に殺されるのか」 「貴様ごとき化け物ではないな、所詮人間だ」 「そうか、俺は人間か、ならば悲劇だろうか、この俺の人生は」 「そんなことはあの世で決めろ、お前の身の上話に付き合っている暇はない」 「喜劇は無理でも、英雄談、くらいはめざせるかもしれんな」 「人間にしては強いかもしれんが、メイジとしては二流以下だな。狩りに慣れても実戦でそれを生かすのには長い時間がかかる」 「……俺は人間を超えたかったのだ、このまま死ねん、このまま悲劇では終わらせん」 右手が棚にあったある物をつかむ。 ワムウが驚く。 「なぜ、そんなものがここにあるのだ!」 ラルカスは血まみれの手で、それを顔にかざす。 「俺は人間を超越する!」 石仮面は、ラルカスの顔で輝いた。 「な、なんなのねあれ!」 「あれは石仮面」 「知っているのお姉様!?」 場が静まる。 「そ、それは本当なのね!?」 タバサは杖を構え、椅子から立ち上がる。 『石仮面』とは 非常に堅い石でできており、古来では鈍器として使われていたという説もある。 いつごろからハルケギニアにあったかは不明で、現在はロマリア皇国が数個保持しているいわれているが、 教皇はそれを否定しており、機密情報とされている。ただし確認された事例として、使い魔召還の儀式で 召還されてきた、鎮魂歌の洞窟などで拾えた、宝箱に入っていた、円盤の入った容器と一緒に届いた、などの報告がある。 これを被った生き物は、恐ろしい生物に生まれ変われるといい、その化け物は、首だけでも生きていられる、何十年何百年も 海の底で暮らせる、ひからびても血を浴びせるだけで蘇る、相手の血を飲み干した場合は、相手の魂を取り込むことができる、 ジェットエンジンをつけて空を飛んだ、女性型アンドロイドを従える、幻想郷を霧で覆うなど数多くの伝説を残しており、 人々から長い間恐れられてきた。始祖ブリミルは恐ろしいこの怪物を倒すために四人もの使い魔を従えたという説もあり、 しかもその内ガンダールヴ以外の伝説の使い魔の死因はこの化け物によるものである、という伝説もゲルマニア東部には 根強く残っており、宗教研究家の間ではこの化け物とはエルフを指している、という説が有力である。 (出典 ブリミル書林刊「豪華哀鈴」より) 「カーズ様の作った石仮面はこんなところにまで広がっていたのか」 「きゅい!?カーズ様って誰なのね?」 「話はあとだ、あの堅い皮膚に再生能力をもたれるとなると、かなり楽しめそうだな」 仮面がラルカスから落ちる。 すでに腹部の傷は再生しきっていた。 ワムウは飛び掛かろうとし、ワンステップで高く跳躍する。 ワムウは、突然現れた人形に空中で殴り飛ばされる。 屈強な体つきで、そして頭部にハートのマークがある。 着地したワムウが呟く。 「スタンド、とやらか」 「ほう、ご存じか。その通りだ。先ほどはあまりのスピードで身を守る暇もなかったが、今は別だ。 力に、精神力に、動体視力に、体力に、全てに満ちあふれている。素晴らしいぞ、この体は!」 杖を振ってでてきた、水が鍾乳石を切り裂く。 「どうだ、この魔法は。ミノタウロスのときですら、俺は水の魔法について勘違いをしていた。 水の本質は治療でも洗脳でもない、ダイヤモンドすら切り裂く圧倒的圧力だ!」 ラルカスはスタンドを従え、杖をこちらに振るう。 鍾乳洞と、ワムウの皮膚が切れる。 ワムウの顔色が、変わった。 杖を構え、ワムウたちに向き合う。 「スタンドの名を名乗ろう、クレイジー・ダイヤモンドだ」 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/13.html
ギーシュ・ド・グラモンは武門の生まれである 父も、長兄も次兄も三兄も、常に戦の先頭に立って活躍している 「生命を惜しむな、名を惜しめ」とは 幼い頃から父に聞かされてきた家訓であった そして、今ここで彼は 「…ぐ、ううっ」 腰が引けていた ために一歩出遅れたのが彼の幸運であったのだろう 召喚したての使い魔、大モグラ(ジャイアント・モール)のヴェルダンテを あのおかしな平民にけしかけずにすんだのだから 向かっていった使い魔のことごとくがブッ飛ばされたのを見て 彼のファイティングスピリットはさらにくじけていた (冗談じゃあないぞ… なんなんだあれはぁぁぁ~~ 戦列艦が服着て歩いているのかぁぁ~~ッ 無理、絶対無理ッ あんなの勝てない、近寄りたくもないッ) 心の叫びが顔に出る 必死に隠したところでバレバレ 彼はそういう男だった だが そっと後ろを見る おびえ、ふるえる愛しい女子生徒達が告げていた 今こそグラモンの武勇を見せよと 「く、く、くぅッ…」 (くそぉぉ~~ッ 行くしかないのかぁ~~ッ ぼくが一体何をしたっていうんだぁ~~ッ) 彼はナンパ男だった しかも無類のミエッ張りだった ドバァッ しかし、流れる冷汗はやっぱりウソをつかなかった 足下の震えは武者震いだと自分で自分に言い張っていた 「およしなさいな」 後ろから呼ばれて振り向くと、額の汗がボダタァッと芝生に滴った そこにいたのは褐色肌のボンッキュッバンッ キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー グンバツのボディーを持つ女ッ!! 「ととと止めないでくれたまえよ、ミス・ツェルプストー ご婦人には、きッききき危険すぎるッ」 「逃げなかったのはホメてあげるけど、あなたのそれは『無謀』よ、タダの…」 「ぶっ侮辱はやめてもらおうッ!! このボクとて武門のはしくれッ 惜しむ生命などッ」 「はいはい、ゴタイソーな前口上はいいから下がってなさい …勝ちたいんでしょ?」 「あるのか勝算がッ!?」 「落ち着いて観察なさい」(つーかナンもカンガえてなかったのねアンタやっぱり) キュルケは鳥の巣頭を指し示す 生徒用の、教鞭状の魔法の杖の先端で ドッ ガズッ ドバ ちょっとだけタフな使い魔達が最後の戦いを挑んでいたが 全員コロリと昼寝するのは時間の問題だった 「見てわからない? あいつを中心に半径2メイルか3メイル」 キュルケの眼には見えていた 鳥の巣頭を中心とした、キレイな球形のシルエットが 最初にたくさん襲いかかっていったとき すでに観察を終えていたのだ 「アッ!!」 ギーシュにも、今見えた 鳥の巣頭がわざわざ相手に「走り寄った」のをッ 「1(アン)」 人差し指を立て、数字の1を示すキュルケ 「あいつは遠くの敵を殴れない」 次に別方向を示す まずは衛兵の方向を、続いてルイズの胸元を 衛兵の兜は頬と醜く混ざり合い、ルイズのマント留めもまたオカシな形に変わっていた キュルケは人差し指に加え中指を立てる 「2(ドゥー)、あいつに殴られたものは変形する」(リクツはゼンゼンサッパリだけど) 「ちょっと待て、ミス・ツェルプストー」 ブワァッ ギーシュの冷汗はスゴイ勢いで復活していた 改めて鳥の巣頭が恐ろしかった 「それは、つ、つまり……こういうことじゃあ、ないのかい 『殴られたら終わり』」 「ええ、その通り でも、『殴られなければいい』とも言えるわよね」 キュルケも決して恐ろしくないわけではなかった だが彼女の中で勝算は限りなく100%に近づいていた 「『殴られなければいい』だって? キミの目は…フシ穴なのかい?」 「あら、どうして?」 ビシイッ ギーシュは鳥の巣頭を指さしたッ 「あいつを見ろよ 怒ってるぞ――ッ 女王陛下のドレスの裾を踏んづけても気づかないくらい怒ってるぞ――ッ」 ムッ!? 鳥の巣頭は直感的に気がついた 誰か自分を指さした 笑われたような気がする ムカつく ぶっ飛ばす!! ズザザッ 駆け足ッ ギーシュの目の中で鳥の巣が次第に巨大化してくるッ 「ま…待て、こっちに、こっちに来るぞッ あんなのをキミはどうするつもりなんだぁぁ―――ッ」 「いいから落ち着きなさいな、みっともない…」(どうみてもアンタのせいでしょアンタの) 「これが落ち着いていられるかッ 父上、母上、兄上、ああっ先立つ不孝をお許し下さいッ」 ギュッ 胸元に指を組むギーシュは始祖プリミルの元に予約席を取りに走っていた ドドドドドドドドド 迫り来る死神 その名は鳥の巣ッ キュルケは他人事のように赤い髪を掻き上げ、 魔法の杖の先端を右手人差し指でピンピン弾いていた 「あなた、そんなにアレが恐ろしいの」 「恐ろしいさッ 怖いに決まってるだろ――ッ」 「でも安心なさい、もう恐れることはないわ」 「えッ なんでッ!?」 ビククゥッ 思わず縮めた身を伸ばし、キュルケの顔を見るギーシュ 自信満々の表情に今すぐ答えを求めていた 「なぜなら」 「な、なぜなら?」 グワッ キュルケの杖がピンと跳ねた瞬間に炎の塊が飛んでいく 鳥の巣頭に寸分違わず飛んでいく 「鳥の巣頭」に飛んでいく そして ボソァッ ボロッ ドザァッ 「…3(トロワ)!!」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「私がもっと怒らせるからよ、ギーシュ・ド・グラモン」 炎の塊は頭上をそれて飛んでいった 「鳥の巣頭」の前半分が、かすれた炎にえぐり取られて消えていた 今やそれは鳥の巣ではなく、前に飛び出たボンバーヘッドであった 「…う、うう、ウソ、ちょ、マ、マジ、そ、そんな ば…ば、ば…バカなぁぁ―――――ッ!?」 呆然とする鳥の巣男を前に、ギーシュの絶叫だけが響いた 「さぁて―――手合わせ願おうかしら? この、微熱のキュルケがッ」 ドンッ 決闘の手袋を叩きつけるがよろしく、 キュルケが前に、進み出たッ 3へ